「……っは………」
弄られていた部分から感じた事もないような感触を覚え、
ユーリの体がビクン、と反応する。
「あっ……だ、大丈夫っスか…?」
その敏感な反応に不安を感じたのかアッシュは動かしていた指を止め手を離す。
掌が離れたと思った刹那、ユーリは思わず彼の手を引きとめてしまった。
無意識な行動だったのでアッシュはもちろん、引き止めたユーリ本人でさえ驚いた。
「……ユーリ?」
アッシュの手首を握ったまま固まったように動かないユーリを
アッシュは首を傾げながら見つめる。
当のユーリも自分の行動を訝しげに思ったがこのまま黙っているのも何だ。
おそらく止めたであろう理由を口に出す。
「……大丈夫だから、止めるな……」
手首から掌に指を移動させぎゅっと握りながらユーリは弱々しく呟く。
多少体を震わせながら、アッシュの手を強く握って。
そんなユーリを見て微笑したアッシュは反対側の手でユーリの頬に触れた。
触れられアッシュの体温を感じるとユーリの体がビクン、と反応する。
「……無理しなくても、大丈夫ッスよ……?」
あの反応を別の意味でとったのかアッシュがそうユーリに問い掛ける。
頬を撫でる手をくすぐったく思いながらユーリは恥ずかしそうに顔を背けた。
「別に無理など…してない」
「じゃあ何であんなに反応したッスか?」
「…………」
アッシュの問いにユーリは答えなかった。
否、答えたくなかったというのが正解であるが。
(……感じたからなどとは言いたくない……)
それは自分のプライドが許さなかった。
「…やっぱりやめましょうか?ユーリが嫌なら俺……」
やめるッスよ、と続けようとしたのだろうか。
その言葉を遮ろうとしたかの如く、無理矢理アッシュの唇を奪った。
ユーリの行動にアッシュは目を瞬かせる。
「………んっ」
自ら舌を絡ませてきたユーリの行動に驚きはしたが
やがてアッシュ自らも舌を絡ませる。
「………ふぁっ……」
歯列をなぞられ、思わず体が震えるとその反応を感じたのか
アッシュはゆっくりと唇を離す。
2人の間を銀色の糸が繋ぎ、それはやがて切れてしまう。
「……大丈夫ッスか?」
息を整えながら問うアッシュを目にしながらユーリは思わずアッシュを睨んだ。
「別に平気だ。……それより何故お前はこうも鈍感なんだ…?」
「………はい?」
突然強く睨まれ、理由が分からないアッシュはただ驚くばかり。
ユーリが起こった原因はもちろんアッシュの行動が原因である。
先ほどから「無理しなくても良いッスよ?」やら
「大丈夫ッスか?」などと問う辺り理解していないのだろう。
この反応が感じているという事に。
そうして今怒っている理由が掴めていないアッシュを見て
それは疑惑から確信へと変わる。
何も分かってはいないのだ、アッシュは。
(もうそろそろ少しぐらいは理解してもいいものを…)
体の重ねあいなど数回行ってきたにも関わらず
アッシュは未だによく分かっていない節がある。
そのせいかいつもユーリがリードしてやっているのだが。
いい加減この反応をこういった行為への拒否反応と思うのはやめて欲しい。
「……いいからさっさと続けろ。……別に嫌がってなどいないのだから」
そう呟いた後さっさとベットに寝転がったユーリを
アッシュはしばらくずっと不思議そうに眺めていた。
だが再び睨まれると「あ、は、はいッス!」と慌てふためきながらユーリの上に覆い被さる。
アッシュは顔をユーリの耳に近づけると吐息をユーリに吹きかける。
「んっ………」
温かい吐息が耳に感じるとユーリの体が微かに反応した。
アッシュは一瞬怯んだがやがて耳を甘く噛んだ。
「っぅ……ん………」
優しく噛まれてはいたが多少痛みを感じユーリはぎゅっと目をつぶる。
アッシュは痛みを和らげようと優しく胸元を擦ってやる。
胸板を温かい掌に弄られユーリは背中をしならせた。
「……あ、んっ……あぁ……っ」
胸の突起物に掌が触れると、思わず声を上げてしまう。
アッシュはやがて耳元からゆっくりと離れると今度は首筋辺りに顔を埋めた。
ユーリの首筋を優しく舌で舐め回す。
「くっ……んぁっ……」
舌の感触に体は敏感に反応した。
その反応を見てもアッシュは先ほど睨まれた所為か舌を動かす事を止める気配はなかった。
むしろ熱中したかの如く、舌を這いずり回している。
狼が舌を使って舐めるのは身を清めるためだと聞いた事はあるが…その所為なのだろうか。
先ほどのような迷いは今のアッシュに一欠けらもなかった。
首筋に顔を近づけ舐めとるアッシュを黙って見つめながらユーリはふとある事に気が付く。
「……はぁっ…ぁっ……アッシュ……」
喘ぎ声を漏らさないように注意はしてみたものの声が思わず出てしまい
ユーリは顔を赤らめながらアッシュに問い掛けた。
アッシュは動かしていた舌を止めると上半身を上げ、ユーリを見下ろすような形へと戻った。
「何ッスか、ユーリ?」
突然呼ばれ多少驚きはしたがユーリの問いかけだ。聞き逃すわけにはいかない。
アッシュは訝しげにユーリを見下ろした。
ユーリはアッシュの返事を聞いてすぐ、アッシュの緑色の髪に触れた。
そして片手で彼の前髪をかきあげて、普段は見ることの出来ない赤い瞳を見つめる。
「…前髪、邪魔じゃないか……?」
「?……ああ、そういう事ッスか…。」
確かに前髪があるせいか汗が特に額に滲んでいる。
視界が狭いのできっと不便だろう、そう思いユーリは言ったのだが。
「別に平気ッスよ。…もう慣れてますし」
心配してくれて有難うッス、と付け加えながらアッシュは笑顔を向けた。
「……平気なら、良いが……」
だがやはり心配になりユーリはじっとアッシュを見つめる。
子供に怖がられたという理由で隠していた瞳をじっくりと見つめていると。
「……でもこうやって久々に見ると、色々と変わって見えるッスね……」
唐突にアッシュが感傷深げに呟いた。
「何当たり前の事を言っているのだ。…別に私もスマイルも怖がらないから
Deuilの活動中ぐらい瞳を隠さなくても良いのではないか?」
「…いえ、慣れたんで。今はこっちの方が意外と落ち着くんスよ。」
「…………」
視界が狭くなって不便だと思うユーリには到底理解できる事ではなかった。
だがアッシュ本人がいいと言っているのだ。ユーリが口出しする言われはないだろう。
そう思っていた時、「あ、でも」とアッシュが何かを思いついたかのように呟いた。
「?何…」
何だ、と言葉を続けようとした矢先、アッシュの手がユーリの髪に触れた。
そうして頭を優しく撫でながら、アッシュは笑いながら言った。
「ユーリのこういった顔見る時は不便ッスよね。
…前髪でちょっとしか見えなくなるの勿体無いッス。」
「っ………!!馬鹿者っ……」
アッシュの言葉にユーリは思わず顔を赤らめた。
アッシュの前髪を触っていた手を離すとそっぽを向いて視線を逸らした。
「…訂正だ。やっぱり見えなくても良い」
「そ、そうッスか……」
突然意見を変えたユーリをアッシュは苦笑交じりに見つめる。
その視線の意味が分かっているからこそユーリはアッシュの顔を見る事が出来なかった。
しばらくした後アッシュは下に体をずらし胸元へと顔を近づける。
突然触れられ、ユーリの体が反応するのを見ながらアッシュは胸元を掌で撫でる。
「んっ……あっ……アッシュ……っ……」
撫でられ掌から温もりを感じるとユーリの体は身じろいでしまう。
そんな反応を見ながらアッシュは小さな声で囁いた。
「……ユーリ、大好きッス……」
「………!ふぁっ……くっ」
指で胸の突起物を弄くられ、ユーリは言おうとした言葉を飲み込んでしまう。
言いたいのに言えないもどかしさに襲われながらもユーリは
ただこうしてアッシュと体を重ねる事に熱中し、
彼が返事を出すのは事後となってしまった…。