『テセアラ都市伝説』

1. はじめに
2. テセアラ都市伝説
    01. 眼が光るテセアラ人
    02. 衝撃の真実!!テセアラ人はネコミミだった!!
    03. 私は見ました、全身白タイツの変態を…
    04. テセアラの奴らは俺たちを喰らうぞ!!気をつけろ!!
    05. テセアラにはうさぎがいると思う人の数→(1001)
    06. 驚異のメカニズム!!テセアラ人は蘇る!!
    07. 井戸の中からダチョウが…
    08. 我らテセアラ人は、シルヴァラントを制圧するであります!!
    09. 鼻から太くて長い鼻毛を出すアフロの男
    10. 闇医者ブラックジョーク
    11. テセアラの秘宝、ツーピース?
    12. 雪の降る頃、不法侵入する三田という人って何?
    13. 【4本腕が】謎の精霊を語れ【超キモイ】
    14. 謎のワイール少女はマジ可愛い
    15. ほぅ、グミなら僕も持ってるよ?
3. 子どもにも分かるテセアラ小話
    01. かぜのクロノア
    02. ピーチマン〜おにたいじは命がけ〜
    03. それいけ!神子神子マン!
4. おわりに




「……ろくでもないなー」
テセアラ人とかけ離れた(一部いそうな気がするが)人物像にゼロスは唖然とする。
逆にテセアラ人がシルヴァラントの本を作ってもこんな変な本にはならないだろう。
テセアラ人のシルヴァラント人へのイメージと、
シルヴァラント人のテセアラ人へのイメージにはかなりズレがあるようだ。
「これはただの噂話が、事実として扱われて本になったようだな。
…確かに下らなくて逆に面白そうだ」
そう言い、リーガルは目次から別のページへ目を通す。
「はい、とても面白そうです。読んでみましょう」
感情の起伏なくそう呟くと、プレセアもページをめくり読み始める。
「何か馬鹿にされてる気がするんだけど…。ま、いいや。あたしも読む」
「これミズホの童話かな」と独り言を言いながら、しいなは興味のあるページから読み始めた。


各自好きなように本をめくる仲間達を見つめた後、ゼロスはロイドの言う
「テセアラの神子のクルシスの輝石はいちご味」、という内容の話を探す事にした。
ひとまず目次を見ることにする。
「…………」
どれも変すぎて分からない。
むしろ全部読んでみたい衝動にかられたが、目的を達成してからでも遅くないだろう。
というわけでゼロスはロイドが読みそうな部分に視点を置いて探す事にした。
(この本ほとんど文字が小さいから、大きな文字の所にあるのかねぇ…?)
まだ全部読んでないから断定できないが、
おそらくロイドにも読めるような所があるのだろう。

そうして、ふと目にした「子どもにも分かるテセアラ小話」という文字。
大きな文字で、簡単な漢字しかない読み物らしく、
子供レベルの知数しかないロイド向けのものは、3種類の小話だった。
「…………これだ」
そしてテセアラの神子が出る、という条件もクリアしているものが、そこにはあった。






『それいけ!神子神子マン!』
さく:しかたせなや





「…………う」
タイトルを読んだ時点で、ゼロスは拒否反応が出てしまった。
こんな作り話丸分かりの小話で、
『あんなに見てそのまま書いたかのような話が嘘なわけないってオレ思ったんだ』
などというセリフをよく言えたものである。
ゼロスは恐る恐る目次に書かれたページを探すと、
そこには可愛い絵付の小話が掲載されていた。
(絵本だ……)
確かにこれなら難しく考えなくても読める。
表紙の前に書かれていた『この話は絵本、それいけ!神子神子マン!
をテセアラ風にアレンジしたもので〜』などという説明書きを、
欠伸をしながら眺めた後、表紙を1枚めくる。
「…………」
そこには想像を絶する物語が繰り広げられていた。







みこみこマンはきょうもお空のおさんぽをしていました。
とおくには、小さなわくせい―シルヴァラントがみえます。
みこみこマンは遠いわくせいのシルヴァラントをながめるのが大すきです。
シルヴァラントにはにんげんという生きものがいる、と聞き
みこみこマンはいつかシルヴァラントへとんでいきたい、と思っています。
あそこまでとおくへ行けば、きっと空のおさんぽもきもちが良いのでしょう。
とおくはなれた地をゆめみて、みこみこマンは今日もさんぽを続けます。

「うえーん、うえーん」
「あぁ、あれは」

空を飛んでいたみこみこマンは下からの泣きごえに耳をすませます。
するとそこには、困ったように泣いているうさぎのおんなの子がいたのです。

「どうしたの、かなしい事でもあったの?」

みこみこマンはやさしくうさぎのおんなの子をなぐさめます。
うさぎのおんなの子はみこみこマンを見てふたたび泣き出してしまいました。
かわいそうに思ったみこみこマンは、うさぎのおんなの子のあたまをやさしくなでます。
するとあんしんしたのか、うさぎのおんなの子はすこしだけ泣きやみました。
そうしてみこみこマンにこう言います。

「あのね、お母さんとはぐれたの」

うさぎのおんなの子はぽろぽろとなみだをながしながら、
それだけを口にしてふたたび泣き出しました。
どうやら、うさぎのおんなの子はお母さんとはぐれたみたいです。

みこみこマンはなやみます。
うさぎのおんなの子をおかあさんのところへ返すのにはどうしたらよいのでしょう。
みこみこマンはうさぎのおんなの子をなぐさめながら、
うーんうーんとかんがえると、ある事をおもいつきました。

「そうだ、ぼくのせなかにのればいいんだ」

みこみこマンのマントは空をとべるのです。
これはめいあんだ、とばかりにみこみこマンはうさぎのおんなの子にていあんします。

「これでおかあさんのところにかえれるよ」
「うわぁい、ありがとう」

うさぎのおんなの子はうれしそうにばんざいをします。
すると、どこからかおなかがなる音がきこえます。
みこみこマンが辺りを見渡すと、
うさぎのおんなの子が少してれたようにおなかをかくしています。

「そうか、きみだったんだね」

みこみこマンはなっとくし、おんなのこにむかってあたまをさしだします。
どうしてさしだすのかわからず、
おんなのこが首をかしげるとみこみこマンはこういいました。

「ぼくのかおはいちご味なんだ。なめたらおいしいよ」

そう、みこみこマンのかおはいちご味でできているのです!
みこみこマンはかおがかたい石でできています。
そのかたい石はなんと味つきなのです。

そういって、みこみこマンはかおをうさぎのおんなの子にちかづけます。
うさぎのおんなの子はおそるおそるみこみこマンのかおをさわると、
すこしべたべたしてました。

それがあめのようなものだと分かると、
うさぎのおんなの子はみこみこマンの顔をなめました。
するとびっくり、ほんとうにいちごの味がしたのです!

「わぁ、すごい。おいしいよぅ」

うさぎのおんなの子はたのしそうにみこみこマンのかおをなめます。
さっきのなきはらしたかおはもうなく、そこにはえがおのおんなのこしかいませんでした。
みこみこマンはとてもうれしくなりました。




パタン。
読む気をなくし、ゼロスは本を閉じる。
(なんだ、これは……)
あまりの作り話っぷりに思わずため息が漏れる。
確かに小さな子が見たら感激するかもしれない。
「テセアラの神子は優しいね」などと話し、
シルヴァラント中のお茶の間で、ゼロスの好感度もアップするかもしれない。
だが、ゼロスは顔が石で出来ているわけでもなく、いちご味もしない
普通の人間…もとい天使の血をひいた神子である。
こんな話を本当だと思われたら小さなハニー達に囲まれ舐められてしまう。
それは嬉し…じゃない、困る。

(つか、こんな話信じてるのかよ…)
齢17歳にしてこんな話を信じるロイドは純粋というか、馬鹿というか。
それとも田舎者ってこんなものなのだろうか。
この小話、田舎者代表のロイドもコレットも信じてそうな内容である。
リフィルの話を聞く分に、ジーニアスは信じていないようだが。

「本当、馬鹿だなぁ」
いっそ清々しいほどに馬鹿な少年の姿を思い浮かべ、ゼロスは思わず微笑む。
今度これをネタにからかってやろうか。
きっとムキになって言い訳してくるだろうなぁ、と思い唇の端をつりあげる。
そんな事を思っていると自分をじっと見つめている視線に気がついた。
目を上げるとそこには正面に座っていたプレセアが、ゼロスに笑いかけていたのだった。
「どうしたのプレセアちゃん?楽しそうだねぇ」
プレセアが笑うなんて珍しい、とちょっと驚きながら軽い調子で話し掛ける。
するとプレセアは「いいえ」と首を振るとこう言ったのだった。


「ゼロス君の方が、楽しそうですよ」

「え?」


ゼロスの反応に満足したのかプレセアは微笑むと、注意をゼロスから本へ向けた。
そうして再び真剣に本を読む。
「…………」
見ていないようでしっかり見ているものだな、とゼロスは思った。
特にプレセアは人の気持ちに敏感な所がある。
それが良い所なのだが、クルシスに情報を流している事がばれたらどうしよう、
などとひやひやする事もしばし、ある。
(…本当に、うちの女性陣には敵わないなぁ)


ある種の諦めみたいなものを覚え、ゼロスも本に目を戻す。
他にも気になる部分は沢山あった。
だがゼロスは、時間がくるまでずっとあの小話を眺め続けたのだ。
こんな下らない話でも、
ロイドがテセアラの神子を純粋な目で見つめてくれる切っ掛けとなったあの話を。
ほんの小さな幸せが、嬉しかった。





結局全部読みきれなかったので、テセアラ組は『テセアラ都市伝説』を借りる事にした。
特にしいなとリーガルはこの本を気に入ったらしい。
しいなは爆笑しながら本を読み、リーガルは黙って笑いもせず本を読んでいた。
ブームを起こす切っ掛けとなったロイドは
「ほら、やっぱり面白いだろ!」と自慢げに胸を逸らし、
最初に借りたジーニアスに肘で突付かれていた。


ちなみにゼロスは、皆には内緒でコレットに
こっそりあの小話だけ載っている本があるかどうか聞き、
『それいけ!神子神子マン!』の絵本を購入したのだった。
ゼロスは、何度も何度も、飽きるほど読み返した。
あんなに下らない本でも愛着が沸けば読むものなのか。
ゼロスは自分の行動にちょっとだけ馬鹿らしくなったのだった。



「……やっぱり味、しないんだな」
悲しそうにため息を吐いた後、「ま、いいや」と呟き、指で赤い髪の毛をいじった。
「…ロイド君。あれ、まだ信じてたの?」
ロイドに舐められた輝石を拭きながら、ゼロスは苦笑する。
あの後も押し問答が続き、「そんなに言うんなら舐めれば良いだろ!」
とヤケになったゼロスは、されるがままにロイドにクルシスの輝石を舐めさせた。
そして残念そうに肩を落としている最中である。
ロイドはゼロスの輝石をじっと見つめながら、彼の背中に手を回す。
「だってさー、オレテセアラ来る前からずっと信じてたんだし、やっぱ譲れなくなるじゃん」
「譲れよ」
すぐさまそう切り返すとロイドは少し唸り、仕返しとばかりにゼロスの首筋を甘噛みした。
「ん……ロイド君は相変わらず、お子さまだねぇ」
噛まれた部分を敏感に感じながら、ゼロスはロイドの行動に苦笑した。
そう言われて露骨に不満そうな表情をしたロイドはゼロスの髪で遊ぶ。
「お子様はこんな事しない」
そうしてゆっくりと顔を近づけ、有無を言わせずにゼロスの柔らかい唇を奪ったのだった。
甘じんでそれを受け止めたゼロスは瞳を閉じながらキスの感触を味わう。



(そういう所がお子様なんだけどなぁ)



もちろん、それは口にしなかったけど。

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後書き(白文字)

シリアスばっかり書いてていい加減飽きたので、
ちょっくら息抜きしようと思い微妙に笑えないネタを書いてみました。
途中はギャクだけど人によってはイチャイチャ話だと思われそうですな。
ギャグですよ…一応。
ロイド君がアホの子ですみません。
この小説のゼロスたんもアホの子みたいだけどorz